第8章 【安室 透】好きな人
レースのカーテンから差し込む光が眩しくて
まだ寝ていたいのに目が醒めてしまった。
・・・と言っても重い瞼は閉じたまま。
このまま再び眠りに落ちよう。
そう思い温もりを求めて手を伸ばす。
しかし、どれだけ探っても温もりがない。
眠る時にしっかり抱きしめていたはずなのに。
それどころか自分が寝ている場所以外
シーツが冷たくなっている。
もしや・・・と思い瞼を開けると
ベッドの上には僕1人だった。
求めている温もり・・・の姿がない。
一晩中抱いて最終的に気を失った彼女を
たしかにこの腕の中に閉じ込めたはず。
どこへ行ったのだろう。
スマホを見ても連絡はきていない。
抱き潰されて逃げたのか
僕との関係に嫌気が差したのか
好きな男に呼び出されたのか・・・・・・。
どれも絶対に許さない。
僕から離れるなど、に拒否権はないんだ。
ふと、ベッドの下に視線を移すと
彼女が着ていた花柄のワンピースと
布面積の少ない下着が無造作に脱ぎ捨ててあった。
昨夜僕が脱がせた時の状態のままだ。
何も着ていない・・・となると家の中にいるのか。
気怠い身体を起こし下着を身に付けてから
彼女を探しに寝室を出た。
♪〜♫〜♩〜♬〜♪〜
何やら洗面所から鼻歌が聴こえる。
風呂に入っているようだ。
出て行ったわけではなかったのか。
ご機嫌な声を聴いて
ホッと安堵のため息をついた。
昨夜は風呂に入らなかったから
ベタついた身体を流したかったのだろう。
風呂好きで綺麗好きのは
セックスが終わると必ず入浴している。
それにしても僕を置いて1人で入るとは・・・
彼女に僕の気持ちを全て理解してもらうには
まだまだ時間が掛かりそうだ。
今日も、みっちり教え込まなければならない。