第4章 【安室 透】看病
「その節は本当にお世話になりました!おかげさまで、引越し先で楽しく過ごしてます」
「そうですか〜それは安心しました!心配なことがありましたら、いつでもおっしゃってください!」
「ありがとうございます!これ、良かったら皆さんでどうぞ」
1年前、お世話になっていた毛利探偵事務所。
当時別れた彼氏からストーカー被害に遭っていた私は、1人で怯える毎日を過ごしていた。
尾行、盗撮、盗聴、盗難など、軽い悪戯だったのがだんだん酷くなり身動きが取れない状況に。
警察に相談しても何も解決しないので、藁にもすがる思いで探偵事務所に飛び込んだのだ。
この毛利探偵と弟子の男性、小さな探偵さんも一丸となって私を助けてくれた。
今日、久々にここを訪れたのは改めてその時のお礼と、ある報告に・・・。
「いや〜益々お綺麗になって!ハッハッハ!」
「ちょっとお父さん、失礼なこと言わないでよね!すみません、さん・・・」
「いえいえ!ありがとうございます」
「でも本当に、明るくお綺麗になられた感じがしますねー!」
お世辞だとしても素直に嬉しい。
気持ちが明るくなった自覚はあるし、以前のようにメイクやお洒落を楽しめるようになってきた。
それも全て、ここの人達と"彼"のお陰だと思っている。
「ただいまー!さん来てる!?」
大きい音を立てて勢いよく現れたのは、ランドセルを背負った小さな探偵さん。
と、その背後にはハムサンドを持ったエプロン姿の"彼"がいた。
「コナンくん!と・・・透さん!」
「さん久しぶりだね!元気だったー?」
「うん、元気だよ!コナンくんも元気そうだね!」
懐っこく、くっついてきたコナンくんが可愛くて、ヨシヨシと頭を撫でる。
こんな風に年相応に甘えてくることもあれば、時折本物の探偵のように凛々しい表情を見せることもある・・・不思議な子だ。
「コナンくん、離れましょうね。さん、道中は怪しい人や出来事はありませんでしたか?」
「大丈夫でしたよ!透さんはいつも心配性なんだから・・・」
「いつも?2人は会うの久しぶりじゃないのー?」
さすが小さな探偵さん。鋭い。