【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第9章 私の知ってる直哉くん②※
口元を押さえているななの手が震えている。
ななは首を垂れていて、直哉の目にはななのつむじしか見えない。
明らかに震えている肩が、ななが泣いている事だけを伝えていた。
「……もう聞きたくない…。」
力無く言ったななの声に、直哉は口元のななの手を取った。
「悲しいんか?なな。」
ぎゅっと手を握られて、当たり前の事を聞かれて、俯いていたななの顔が歪んだ。
「俺にとってななが東京に行く事は……五条悟が隣におることは同じやったで。」
直哉の言葉にななは目を見開いた。
驚いた様に顔を上げて、直哉を見た。
「……でも私は……。」
ー直哉くんの様な裏切りをしていない。ー
そう言おうとして、悟にキスをされた事を思い出す。
出しかけた言葉を止めた時に、ななの表情が変わった。
その変化に、直哉が気付くのは簡単だった。