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ぼんMEN

第3章 チョウザメの秘密


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
 ぼんさんが監禁生活になると決まって数日前。ぼんさんの悲鳴に近い声は今もよく覚えている。
 想像していた通り、ぼんさんは監禁中、今まで見たことないくらい疲労していた。監禁中に強いられる縛りに、嗜好品はよくないと自分でタバコを禁止にしていたのは今でも笑える。
 しるこさんと一緒に監禁中のぼんさんに会いに行ったが見ての通りだった。何もすることがないし何もないとか、普段外に出ないのに、外に出てはいけないと言われると余計辛い、とぼんさんはずっとボヤいていた。配信では平気そうにしている辺り、この人は芯では強かなんだろなって思う。
 そこで俺は水族館に出掛けた。いや別に、ぼんさんのためじゃないし。なんとなく水族館に行きたかっただけ。
 俺はそう何度も自分に言い聞かせながら水族館に来た。一人で来たのは初めてかもな。前に来たのは……あー、学校のなんかの行事くらいだったか。
 水族館には癒し効果があるらしい。俺もつい綺麗な魚や面白い生き物に目が奪われてうっかり写真を撮るのを忘れたくらいだ。
「あ」
 そして一番目を引いたのはサメみたいな魚だった。この見た目は捕食する側だろうという大きさであるにも関わらず、ソイツは普通の魚と同じ水槽に入れられ、早く泳ぐ為のヒレではなく、まるで蝶みたいなヒレで水中を泳いでいた。チョウザメだった。
 その時ふと、監禁されているぼんさんを思い出した。このチョウザメの写真をぼんさんに送ってやろうと思ったが、あまりにもデカイのに優雅に泳ぐ様を画像だけでは伝わらない気がした。丁度、チョウザメが手前まで泳いできたし、動画を撮ってやろうと思った。
 いい感じに撮れたな。
 俺は時間を確認する。この時間ならぼんさんはもう起きていて、何もすることがないと暇を持て余しているだろう。SNSに載せるより真っ先に送ってやろう。

 その後ぼんさんには案の定聞かれた。
「あのサメの動画なんだったの?」
「いやぁ、ちゃんとデカイのに強さ捨ててたんで」
「何よそれ」
 ぼんさんにはクスクスと笑われた。

 おしまい
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