第21章 Psalm 121:1-3
「へえ…なんか、いいな」
「え?」
「智に、ロートルなんて言葉を教えるような爺さんがそばにいるの、いいなと思っただけだよ」
翔には…
そんな爺さん、居たんだろうか。
「知ってる限りでいいんだけど…櫻井の家の状況、教えてもらえるか?家族構成とか」
翔の個人情報を俺が言っていいものかと思うが、それでも早く回復して欲しいという気持ちが勝った。
「ああ…8年前までのことで良ければ…」
以前世話になった時、粗方は話してあったがもう少し踏み込んで翔の話をした。少し時間が掛かったが、西島は黙って聞いてくれた。
「そうか…性癖、ご両親にバレてるのか…」
「ああ。そのせいで、見限られたみたいなことは言ってた」
「なるほどなあ」
ペットボトルの茶をごくごくと飲むと、考え込む顔になった。
「これは…難しいかもしれんぞ、智」
「え?」
「おまえは家庭環境には問題がなかったから、治療も標準治療でなんとかいけたが…櫻井の場合は、複雑だ」
「どう複雑なんだよ?」
「ご両親から見放されたと櫻井が感じるような環境、そして自分の性癖の真っ向からの否定とも取れる環境…簡単に言えば、元々傷がついていたところに今回更に傷がついて大きな傷になってしまった可能性がある」
「今回あったことだけじゃないってことか」
「そうだ。過去の傷も絡んでたとしたら…立ち直るまで時間が掛るかも知れない」