第20章 Romans5:3-4
「様子がおかしい?」
松岡の爺さんからの電話は、意外なものだった。
『ああ。前にあの顔の濃い坊っちゃんとよく会ってるって言ってただろ?』
「ああ…言ってた」
『あれな、会ってるっていうより、押しかけてるって言うほうが正解かもしれん』
「なに…?話がよくわからないんだけど」
スマホを肩に挟みながら、ナイフを研いでいる。
こういうのはなんかしながらのほうがうまくいく。
だから爺さんからの電話に出たんだが…
『だから…なんつーかよぉ…松本のほうが、櫻井の家に押しかけてるんだ』
「押しかけてる?」
砥石からナイフを離して目の高さまで持ってくると、刃を眺めた。
『それで気になってよぉ…暫く家に張り付いてみたんだ』
「爺さん…」
様子を見てくれとは言ったが、なにもそこまでしてくれとは頼んでいないのに…
こういうところに、爺さんの人柄が滲み出る。
強面だし、すぐ手が出るけど。
根は、お人好しなんだ。
『そしたら…櫻井、仕事行ってないみたいなんだ…』
「え?」
『ずっと外に出てこないんだ』
「そんな…」
『しばらく観察してたらよ、松本は会いに来てるというより飯を配達に行ってるって感じなんだよな…』