第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
「いい経験させてもらったのはいいけど、検査結果が心配ですね…」
ニコニコ笑ってる能村さんの顔を思い浮かべたら、ちょっと胸がきゅっとした。
お子さんがいるのは知ってたけど、母子家庭だなんて知らなかった。
今ごろ、能村さん自身も不安になってるんじゃないだろうか。
「まあ、何事もないといいけどね…」
カルテに打ち込みをしながら、三宅先生は呟いた。
それから、しばらくは長時間のオペの助手で入ることが多くて、バタバタした日常を過ごしていた。
外来もあるし、手術の症例の勉強もしなきゃいけないし、助手の勉強もしなきゃいけないからてんやわんやだった。
病棟では時々能村さんとすれ違った。
いつもどおり、ニコニコ笑って挨拶をしていってくれる。
「先生、検査結果まだ出ないよね?」
「そうですねえ。やっぱ二週間くらいは必要ですよ。どう考えても」
「そっか~。もう私せっかちだからさ。早く、結果知らせてほしいのよね」
「わかったら直ぐ、知らせますよ」
「よろしく!櫻井先生!」
嬉しそうに去っていく能村さんを見ていると、大したことはないんじゃないかって。
そう思っていた。
「…え?」
三宅先生と井ノ原先生が渋い顔をしている。
「だから、追加検査が必要だって言ってるの」