第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
週明け、能村さんの予約日になった。
時間通りに整形の診察室に現れた能村さんは、ニコニコしながら診察用の椅子に座った。
「すいません、三宅先生。お忙しいのに…」
「いえいえ。櫻井が言う程だから、甘く見たらいけませんよ?」
「ええ~…?だって櫻井先生大げさに言ってるだけでしょ?」
「違いますよ」
「ほら。こう言ってるから、観念してちゃんと調べましょうね?」
「ええ~…今、ホント時間ないんですよ…」
「え?」
勤務中の診察は、時間に余裕を持たせてあるはず。
そこを配慮しない上長はすぐ突き上げを食らってしまうから、そこのとこはきちんとしてるはず。
「なんで?」
三宅先生が聞くと、能村さんは顔を曇らせた。
「上の子が、受験なんですよ…」
「ああ…」
三宅先生は相槌を打って話を聞く態勢に入った。
オペの可能性がある以上、患者のこういう事情というのは把握しておかないといけないものだから。
「やっと下の子が中学に上がって、時短勤務が終わってこれからって時なんです。今、私が病気だってわかったら…」
「不安だよね、能村さん」
「はい…」
「でもね、検査しないと。もし大きな病気だったら、どうするの?」
「そんな大げさな!」