第3章 Mark 3:29
全身が強張って、汗が吹き出してくる。
首やら背中やらびっしょりと濡れていくのを感じる。
「熱い…あつい…」
「智……」
翔は洗面器を片手に持って、俺の額に手を当てた。
「すごい熱…どうして…」
その手は冷たくて、気持ちよかった。
「智、待ってて…薬、薬持ってくるよ…親の病院まで取りに行ってくる」
「やめ…ろ…おま、これいじょ…」
「…だめだからね。俺が絶対、智を治すって決めたんだから」
「だめだ…」
「だって智っ」
「そばに……」
「…え?」
声が掠れて出ない。
喉の奥がきゅっと狭くなって、息が通っていない気がする。
「…ひとりに…」
苦しい
気持ち悪い
汗が止まらない
「…する…な…」
お願い
お願いだから
あそこに、父さんがいる
そこに、母さんがいる
ここには、姉さんがいる
「…だめ…ひとり…しない…で…」
お願い。
お願いだから。
そばにいて
マリア様
俺のマリア
『しかし、聖霊をけがす者は、いつまでもゆるされず、永遠の罪に定められる』
「ちが…う…ちがう…」
「智っ…しっかりして!」
俺じゃない
俺じゃないんだ
「熱いっ…あああっ…翔っ助けてっ…」
助けて
俺のマリア
助けて
ここは暗い
【第3章 Mark 3:29 END】