第18章 Genesis1:1-5
喉が、少し痛い。
「けほっ…」
「また風邪引いたの?」
和也が俺の顔を覗き込む。
「引いてない」
「どうしてそんなわかりやすい嘘つくの?」
そう言うと、前方に目を遣ったまま、ポケットに手を突っ込んだ。
「ほら、のど飴」
指先に挟むように飴の個包装を俺に差し出した。
やはり視線は前方に向けたままだ。
「…ありがと」
ビニールの個包装を破ると、中から薄ピンク色の飴が出てきた。
そっと落とさないように口に含んだら、いちごの甘い香りが広がった。
「飴だけに、あっめ」
「…甘いっていいたいわけ?」
「うむ」
「ちょっと黙ってて貰える?」
ここはある大きな公園の木の上。
最近ずっと和也と二人がかりでターゲットを狙っている。
その作業も大詰めと言ってもいい今日……
和也が少し苛立っていたから和ませようとしたんだが、ちょっと失敗したようだ。
「もお…虫っ…」
眼の前に蜘蛛でも降りてきたのか、虚空を手で払っている。
「どうしてこんな木の上で何時間も待ってなきゃいけないのよ…」
「しょうがねえだろ?雅紀がここなら確実だっていうから」
「だからって、何日こんな事してんのよ!?」
相当、木の上に居るのが嫌なようで、和也はずっとブチギレている。
「ちょっと落ち着け。な?」
もうすぐターゲットが通るっていうのに。