第15章 Genesis2:16-17
『抱いて…』
あんなふうに言われて、歯止めが利かなかった。
自分が翔に比べたら、取るに足らないくだらない人間だとしか思えなかった。
嫌なことから逃げ出して、そのまま捻くれて。
終いには人の命を奪う仕事で暮らしてる。
今更、家族を殺した事件のことを解決したところで、俺が普通に世の中に戻って行ける可能性なんて、ない──
なのに、真っ当な道を歩いてる翔を見て、あんな気分になるなんて……
「ほんと、ごめん…翔…」
気絶している翔の頬を撫でた。
すべらかな皮膚は汗と涙でびっしょり濡れていて。
「今、綺麗にしてやるからな…」
ふと顔をあげると、カーテンの隙間から差してくる光がオレンジになっていることに気づいた。
「もう夕方か…」
あれから、ずっとセックスしてたのか。
そりゃ翔も意識飛ばすよな…
そっと部屋から出て、洗面所に行った。
お風呂の給湯ボタンをぽちっと押すと、タオルをいくつか持って寝室に帰った。
翔の身体をざっと拭くと隣のソファベッドに移して、風呂から上がってすぐに横になれるよう、シーツやベッドパットを交換した。
すぐにそれを洗濯機まで持っていって洗っている間に、翔の身体を担いで風呂に入った。
「あ…智…?」
身体をさっと洗ってからお湯に入ったら、すぐに翔は目を覚ました。
でもクソほど怒られてしまった。
身体に力はいらないんだと…