第12章 Ave Maris Stella
その日の実習を終えたのは夕方だった。
あの大きな封筒を入れているコインロッカーに立ち寄って、静かな喫茶店に入って中の記事を改めた。
「やっぱり、これだ…」
目の部分は隠してあっても、智の顔だ。
他にも関連した記事がないか探してみたが、顔写真のないものや名前の伏せてあるものばかりだった。
かろうじてあの記事でわかった地名の物を拾い読んでみて、他にも3枚のコピーを見つけた。
これらのコピーの写真を撮って、潤に送った。
潤からは受け取った旨の返信だけがきた。
きっとまだ忙しくしてるんだろう。
晩飯の材料や惣菜を買って、急いでタクシーに飛び乗った。
今日一日が、まるで昨日までとは違う別の物のように感じて、見る景色すべてが新鮮に見えた。
こんなこと、あれ以来だ。
初めてスマホを持たせてもらった、あの日以来──
願わくば、この新たな時間の気配が…
俺達にとって明るい未来が来る予感でありますように
「ただいま!」
「おかえり。遅かったな」
いつもより遅くなったから、心配でもしてくれたのかな。
智は玄関に迎えに出てくれてた。
下のオートロックにキーを差し込んだら、モニターが反応するからそれを見てくれたんだろう。
「荷物が増えちゃったからタクシーに乗ったら、渋滞にはまっちゃったんだよ」
「ほんとだ。そんなに買ったのか」
「うん。調子に乗っちゃった」
「いいよ。食べきれなかったら、ジップロックに入れて冷凍しときゃいいから」
「智…尊敬する」
「あったりめえだろ。ほら手ぇ洗ってこいよ」
そして、こんな一日が…まだ続きますように
【Ave Maris Stella END】