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Maria ~Requiem【気象系BL】

第9章 Romans7:7


そのまま何も起こらず新年を迎えた。

相変わらず、智の容態は停滞していた。
だからお正月のお祝い的なことは、なにもしなかった。
実家も帰ってこいって言わないから、今年は帰らなかった。

でも少し歩けるようにはなったから、寝室から一人で壁伝いにトイレには行けるようになった。
だけどまだ傷も痛んでいるようだし、ご家族の幻覚に苦しんでいるようだった。

悪夢を見ては、汗まみれで飛び起きている。

というのも、それまではリビングのソファで寝てたけど、年末に届いたソファベッドを寝室に置いて智と一緒に寝るようにしてるんだ。

だから飛び起きたら俺も一緒に起きてしまう。

それが一度や二度じゃないから…
あのボヤ騒ぎはどれだけ智の心の奥底の蓋をこじ開けてしまったんだろう。



「じゃあ行ってくるね」

新年は桜井総合病院のパーティーがある。
多くの人が仕事始めに向かう日に、俺たち経営者一族はパーティーをしている。

皮肉だなと思う。

そうやって、どの世界の偉い人と繋がっているのか知らないけど…

「ああ。気をつけて」
「帰りはそんなに遅くならないと思うけど、先に寝ててね」
「ああ。わかった」
「ごはんは、リビングのテーブルの上にあるよ」
「わかったってば」

ベッドに横になったまま、智は苦笑した。

「もしテレビが見たくなったら、そのままリビングに居てもいいけど、暖かくしてね」
「わかった」

母ちゃんかよって言われながらも、くどくど言うのは止められなかった。

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