第1章 始業式
「伊作、委員会手伝いにきたよ」
薬草独特の臭いが充満する保健室に入りたがるくノたまはそうそういない。
ずる休みがしたいという理由をのぞけば、皆無であろう。
それは匂いのせいももちろんあるが、大方が我らが保健委員会委員長、不運大魔王の異名を持つ善法寺伊作が原因である。
「ああ、、ありがとう」
不運を呼ぶ体質さえなければ学年一とも思われる実力を持ち、優しく、顔立ちも整っている。
「伊作、落第ぎりぎりだったんでしょう?留三郎から聞いた」
そんな彼をどうしてくノたま達は避けるのか。
すべては彼の持つ不運な体質に帰着する。
正確に言うとすれば、避けてはいない。彼を慕うくノたまもいるにはいる。
それでもお付き合いしたいとまではいかないのが、彼の残念なところで、また不運大魔王たるゆえんでもあった。
「はぁ、なんでバラしちゃうんだろう留三郎。言うなって言ったのに・・・・・・」
私が一年生の時、同学年のくノたまは自分も含めて七人いた。
くノたまの所属する委員会は二つあり、一つは学級委員長委員会、もう一つは保健委員会だ。
学級委員長は立候補ですぐに決まったが、保健委員会は誰も入りたがらなかった。
その当時はまだ保健委員会が不運委員会だということは知りもしなかったから、立候補者がいない理由はあの独特の臭いのみだった。
「それくらい聞き出すなんて朝飯前。留三郎の弱点、私らしいから」
「知ってる。一体どんな卑怯な手を使ったんだろう」
長いこと決まらなかった保健委員会の役を、私は何事も経験だと言うことで引き受けた。