第6章 承 その3
めぐみがなかなかいい名前を思いつかず悩んでいたのを、弟のまさとが救ったのです。
“モルモットのもるだけ残して、下に何かつけ足すのはどう?もるぞうとか、もるきちとか、もるさぶろうとか。それこそごんざえもんとか”
“うん最後の1個明らかに違くないか”
姉であるめぐみは冷静にツッコミながらも、弟のその案を大変気に入ったようでした。
“他にどんなのがある?”
“うーん、しっくりくるのを探す…もるごろう、もるすけ、もるた、もるいち、もるじ、もるつな”
“何そのレパートリーは。なんで全部江戸チョイスなのよ。なんかこう、いい感じに渋みが効いてて大変結構だけども”
“そういう可愛いつらしたぬいぐるみに、もるぞうとかいういぶし銀な名前がついてるのがいいんですよこれが。分かるかねお姉さんや”
“完全に同意。我が弟センスのかたまり褒めて遣わす”
この会話を聞いてモルモットは覚悟を決めました。どうやら奇妙奇天烈な名前を付けられるのは間違いないようです。
アザラシの方はごまというあまりにも在り来りな名前なのに、とごまの方を見ると、何故か遠い目をしていました。
“ごまの名前はどうやって決まったんでちう?”
“聞くかまろん?話すと長くなるんだがね”
“いやどういうことでちう”
どうやらごまは最初、めろんぱん3号という到底理解の及ばないヘンテコこの上ない名前だったようです。
“それがなんでこんなシンプルになったんでちう”
“もちろん、ここに来るまでにぁそれはそれは長い年月がかかったまろん”
ごまは、自分がごまという名前になるまでの名前の変遷をモルモットに話してやりました。
まろんぱん3号、まろんぱん、まんごう、まろりぬす、うじりぬす、ごまりぬす、ごまりぬす・ごまりんたす、ハムきち、はむべえ、はむぞう、はむえもん、ハムじ、はぶらし…
“……なんだろう、聞けば聞くほど意味わからないでちう”
“ですよねまろん”
“とりあえずぼくに今から付けられる名前に対する覚悟は決まったでちう”
“たぶんその覚悟の上を行く何かがくるまろん、あきらめた方がいいまろ”
すると再び話している最中にごまは宙を舞い、どこへ行ったのかとみまわすと、そのままめぐみの手元で撫で回されているのでした。
めぐみと弟はまだ名前を考えているようです。