第2章 承
少しの期待と多くの不安の中、月日は経ちました。なかまたちは皆次々にそれぞれの飼い主と出会い、モルモットに別れを告げて行きました。
そしてある日、ついに一緒に棚の上に並んだ仲間は皆いなくなり、新しい仲間がたくさんやってきたのです。モルモットは当然、新しい仲間たちに馴染めませんでした。
“このままぼくだけ売れ残るんでちう…?”
そんな寂しさに胸を押しつぶされそうになりながら、モルモットは今日も通り過ぎていくお客さんたちを眺めています。
そのときです。
1人の女性が、モルモットの目の前を通り過ぎました。その子はどうやらぬいぐるみが大好きで、大人になった今でも一匹のあざらしのぬいぐるみを大切に大切に可愛がっているようでした。
“ああ、とても優しそうなにんげんでちう。ぼくはこのにんげんに着いていきたいでちう。こっちを向いてでちう。ぼくを見つけてでちう。ぼくはここにいるでちうー!”
モルモットは必死に叫ぼうとしましたが、声を出すことはできません。それでもその祈りが届いたのでしょうか。女性はゆっくりとモルモットの方に振り向き、目を合わせ、しばらくの間じーっと見つめていました。
“きづいてくれたでちう?”
モルモットは途方もない喜びに今度は歓声を上げたくなりました。しかし、女性は立ち去っていきます。
“なんででちう…。飼い主…”
モルモットは、ようやく素敵な飼い主に巡り会えたと思っていたため、胸に大きな穴が空いたような悲しみに襲われました。