第5章 𝕆𝕕𝕠𝕟𝕥𝕠𝕘𝕝𝕠𝕤𝕤𝕦𝕞
緑谷くんのくしゃりと笑う笑顔が私は好き
ちょっとだけ雰囲気が啓悟くんの笑い方に似てる、かも…
すると緑谷くんは笑みをスッと消して、言いにくそうにというか、どこか緊張した様子に変わる
「あのさ…違ってたらごめんなんだけど…
秋月 さん、ボクと昔…って言っても六〜八歳の頃に会ったことあるよね?多分かっちゃん繫がりで…」
私はその言葉に思わず息を呑む
緑谷くん覚えてたんだ…いや思い出してくれたのだ
なんだか照れくさい気分になってゆっくり頷く
『うん…私もつい最近思い出したんだ、いつ気付いたの?』
「ボクもつい最近だよ
かっちゃんと 秋月 さんがよく一緒にいるから二人の様子を見てたら段々思い出してきて」
『…二人の様子?』
「あの頃よく二人で一緒にいたからさ…
かっちゃんもきっと覚えてると思うんだ
… 秋月 さんが引っ越したあともずっと、気にかけてたから」
胸がチクチクするように痛む
緑谷くんは伏せていた目を上げて、焦ったように胸元で手を振る
「あ、ごめん!!!別に 秋月 さんのこと責めてる訳じゃなくて…
それくらいキミのことをかっちゃんが心配してたって言いたかったんだ」
『…うん、気を遣わせてごめんね
緑谷くんにもう一度会えてすごく嬉しいよ』
会話を切り上げて、前に体を戻す
勝己くんずっと心配してくれてた…
轟くんはいつも通りだった…
勝己くんはそんな私に何一つ文句を溢さない…
轟くんは私に触れても…何も思わない
相対する不安が交互に頭の中を駆け巡る
わたし…何を思えば…だれを思えば
ガタンッ
その物音にハッとして顔を上げる
勝己くんが荒々しくイスを引き座るところだった
おはようって口を開こうと思ったのに、上手く口が動かなかった
…こんな私が彼に話しかけていいのかわからないよ
勝己くんの背中を眺めながら泣きそうになっている自分に気付く
啓悟くんの背中に届かなかった声
轟くんの背中に二度届いた声_______
勝己くんの背中には届くの…?