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花水木が咲く頃に ꕥヒロアカꕥ

第4章 𝕂𝕒𝕝𝕒𝕟𝕔𝕙𝕠𝕖 𝕦𝕟𝕚𝕗𝕝𝕠𝕣𝕒





あの頃より掠れて低い響きが耳に残る。いつの間にか爆豪くんはしっかり私の顔を捉えていて、その瞳は真剣そのものだった


『…っ』


゛爆豪くん゛

その言葉は喉を越す前にすーっと消えていく。代わりに温かい思いが込み上げてくる。握りしめた拳から込められる力に押し出されるように言葉が口から溢れる



『か…勝己くん…?』


言ってしまったあとに焦燥感に駆られる
わ、生意気に聞こえてないかな…??
名前で呼んでたたのはあくまで8年以上も前のことなのだから…



「…疑問形かよッ」

ボソッと呟いた彼の一言に顔を上げると息を吸う間もなく後頭部を掴まれ、思い切り引き寄せられる。意識が追いついたときには私の視界は勝己くんでいっぱいでお互いの鼻先が掠め合う

ふわりと唇に当たる感触に身体が跳ねる。後頭部に回されていた手が離れたとき、私達の間に薄く赤い"何か"が舞い落ちていく

その"何か"は
彼から貰った美しく靭やかな一羽の羽根だった
彼の…啓悟くんの個性の一部


私の唇に触れたのはこの剛翼だと気付く
正確には私と勝己くんの唇の間に挟まっていた

啓悟くんから貰ったこの羽根はスカートのポケットに入れて常に持ち歩いていた。不思議と身に着けていると彼が側にいてくれるようなそんな安心が私を包んでくれていたから


私は膝元に落ちている剛翼をそっと手に取る。勝己くんとの近い距離を一瞬忘れ、羽根が落ちてしまったことに気を取られる
……階段から落ちたときにスカートから出ちゃったのかな??それにしても…


手の中に収まった剛翼から意思のようなものを感じられた
意識的でまるで生きてるみたいに



「チッ胸糞ワリぃなそれ」

勝己くんは私の手元を厭わしいものを見るような目つきで見る
私はついムッと頬を膨らませて唇を尖らせる


『…胸糞悪くなんてないもん
私にとっては大切なお守りなの』

「知るかよ、オレにとってはガラクタ同然だわ」

『あぁ、ひどい!』


勝己くんはべーと舌を出し、再び視線を逸らす。辺りはすっかり静まり返っていて、窓から降り注ぐ茜の色の光に随分と時間が経っていたことを実感させられる


彼にそろそろ帰ろうと促すと、先に行けと言われてしまい私は素直にそれに従った

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