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花水木が咲く頃に ꕥヒロアカꕥ

第9章 𝕎𝕒𝕥𝕖𝕣 ℍ𝕪𝕒𝕔𝕚𝕟𝕥𝕙


《轟side》


「私…誰を好きなのか分からないの…っ」


心臓が痛いほど波打ち、黒いモヤっとしたものが体の中心に集まってそれは大きな塊へと変化する。依然として手の力を緩めない。

一息はいてから極めて冷静に、宥めるように尋ねる


『…他に好きなヤツがいるってことか?』


秋月 は躊躇ったもののゆっくり首を上下させた。途端に炎のように苛立たしさが全身に広がりあらゆる感覚が麻痺する。

嫉妬、増悪、羨望色んな感情がグチャグチャに混ざり合って言葉が見つからねぇ


「…最低だってわかってる
でも…その人は私のことずっと大事にしてくれて、だから傷つけたくなくて」

『じゃあそいつと付き合うのか?』

口を衝いて出た言葉は余りにも低くて酷く冷えていた。掴んでいた両手を解放し、錯綜している瞳をじっと見据える。

全部、オレだけだったらと何度願ったのか分からねぇ


『 秋月 はオレを選べばそいつが傷付くと言ったが、オレだって同じだ
それともそれでもいいと思ってんのか?』

「違う!!そんなこと思ってないよ…
その人とは…付き合わない…誰とも…」

『それじゃあ何も変わんねぇだろ
誰かが傷付くじゃなく、 秋月 の気持ちを聞かせてくれ』

瞳がゆらゆら揺れてオレを拒むように後退ろうとする。

秋月 に以前「関係ねぇ」と突き放した事があった。それでも彼女は追いかけてきてくれた。

オレだって離さない絶対に




『好きだ』



時が止まったように動きが止まり、徐々に見開く瞳としっかり目を合わせる。



『 秋月 が好きだからオレを選んでほしい』



「な…ん…で…聞けな…っ」しゃくり上げ言葉にならなくなっているその声を聞きながら、そっと手を伸ばしていた。

右手で柔らかい頬に触れて、とどめなく溢れる涙を拭き取る。あのときも同じことを思ったのを思い出す。


『___綺麗だ』



今まで目にしてきた何よりも_______
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