第8章 𝕊𝕦𝕟𝕗𝕝𝕠𝕨𝕖𝕣
《轟side》
「良い加減子供じみた反抗をやめろ
おまえにはオールマイトを超えるという義務があるんだぞ」
……るせぇ
「わかってるのか?兄さんらとは違う
おまえは最高傑作なんだぞ!」
じんじんと音を立てて湧き上がる怒りを歯を食いしばり堪える
子供じみてんのはどっちだって話だ
『それしか言えねぇのかてめェは…
お母さんの力だけで勝ち上がる
戦いでてめェの力は使わねぇ』
「いまは通用したとしてもすぐ限界が来るぞ」
殺気立って内臓が震えるほどの激しい怒りが腹の中で渦巻く
結局オレはこの先どこまでもお母さんの影を見て親父に囚われるんだろうと思った。同時に一生変われないのだろうとも
「悪ィな」
……やっちまった
最大質量の氷結をぶっ放して、氷の塊で半分覆われた会場を改めて視界に収める
ここにいるのにオレだけ別のどこかにいるみてぇで
自分の存在意義が分からなくなる
どこに走ればいいのか、目標でさえ暗闇に閉ざされいくら追いかけても届かねぇ
「すまねぇ…やりすぎた」
……なんのためにヒーローになりてぇのか
゛個性は付いてきて、そこにあっただけ
私は私を助けてくれた轟くんが好きなの ゛
゛氷が轟くんの炎じゃ溶かせないなら、私の光で溶かす! ゛
゛…私、待つよ
轟くんが伝えたいことしっかり気持ちに出来るまで
もう逃げたりしないから ゛
゛今度は私がアナタを助けるから!!!! ゛
脳内に再生される彼女の姿に口元が勝手に綻んでいくのが分かる
いつも一生懸命な 秋月 を見てるとオレの中の荒々しいものが疾風のように消え去り、全身から浸みだすような安堵を覚える
誰かといて、こんなこと初めてだ
彼女との時間は個性も親父のことも全部オレを縛り付けてたものから解放してくれた
傍にいないと自分が不安定で、限りなく欲しくなる
『会いてぇ』
ほんとは全て終わってから話すつもりだった
でもいま話してしまいたい気分だった
自分の控え室に戻る前に 秋月 に会いに行こうと足の向きを変えたとき
『…!』
「あ、轟くん!ちょうどよかった!」
彼女はそう言って爛漫と咲く花のような笑顔をオレに向けた