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花水木が咲く頃に ꕥヒロアカꕥ

第7章 𝔸𝕟𝕖𝕞𝕠𝕟𝕖





あぁもうどいつもこいつも
人の気も知らないで

『…消せよ』

「いや」

オレは彼女の肩を掴んで自分に引き寄せる。気合い入れて化粧してきたであろう顔に自分の顔を鼻先が擦れるギリギリまで近付ける

「なっ…にし」

『このまま写真撮って焦凍くんに見せられちゃまずいでしょ?』

虫を見るような目で睨みつけたあと、オレの胸に手を置いて距離を取ろうとする

「はっ?馬鹿じゃん… ひかりちゃんにも見られていいわけっ」

『それで ひかりちゃんが嫉妬してくれるならね』

彼女目を大きく開いてそれから「わかったから」と小さく答える

…別にオレは ひかりちゃんの幸せを願ってるわけじゃない
あ、ちょっと語弊があるな

そんな遠い先の幸せなんかより、今の ひかりちゃんを顔を曇らせることは避けたいだけだって

身を引く?冗談じゃない
だから言ってる、オレはいい人間じゃない


「…アンタ十分に歪んでるわ」

『褒め言葉として頂くよ』


背を向けられようやく帰っていくのかと思ったら再び振り返られオレにじぃっと視線を送ってくる

『まだなにかー?』

「……汐菜」

『はぁ?』

彼女は一つ深呼吸をしたあと力強い声で繰り返す

「私の呼び方!し、お、な」

『え、呼んでほしいってこと?
ちなみにそれ名前と苗字どっち』

「ウザッどっちでもいいでしょ」

明日には忘れてるかも、なんて軽口を叩こうとしたとき汐菜の顔が突如真顔に変わり曇る

「あのさ…私の個性、対象一人の記憶を消すなんだよね
突き落とそうとしたんじゃなくて、個性使ってあの子から焦凍くんの記憶全部消してやろうって」

目を伏せ、自嘲気味に笑う彼女を見てるとなんだか自分の中でも、多分同じ罪悪感が生まれたのがわかる
ズルいよな…

『過去に使ったことは?』

「一度だけある、でもそれはその子に頼まれて
…………大嫌いな子だった」

『そっか』それだけ呟いて、今度はオレから飛び立つ
もう二度と会うことがないといいけど
バカな真似はしてほしくない

「わたしー!やっぱあの子嫌いだからぁ!!
ほんとに…嫌い大っっ嫌い!!」

ぎょっとしたような汐菜の叫び声はオレの背中を超えて青空に溶けていく

きっと彼女の個性で消した記憶は
二度と戻らないんだろうなんて、そんな事を考えてた
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