第7章 𝔸𝕟𝕖𝕞𝕠𝕟𝕖
「…ねぇ気になってたんだけど…
アンタ、あの子のこと好きなの?」
様子を伺ようにおずおず聞いてくるけど見事に地雷。無視してもよかったはずなのに口が勝手に開く
『………あの子って?』
「やっぱりそうなんだ………わたしと同じじゃん」
はぁ??
ムキになって言い返しそうになるのを咄嗟に堪える
いやその通りだろ
オレは ひかりちゃんとの思い出があるから、押し留まれるとこがある
けどなかったら欲しくて、焦って、嫉妬で狂って。同じことしてたんだって考えたら…
ってオレもそこまでバカじゃなか
『ハァーアンタ何なの? ひかりちゃんがそんなに憎い?』
「うん、憎い、ウザい、消えて欲しい」
清々しいほど正直なこった。嫌悪に歪めた顔からは本心だって嫌でも伝わってくる
「…わたし焦凍くんと同じ中学出身なの」
『あぁ、それで相手にされてなかったんだ』
「……だからずっと好きなんだよ?!なのに…なんで…
後から好きになったくせにこんなの不公平じゃん!結局この気持ちはどこに行けばいいの?!あはい、そうですかって身を引けるわけねぇじゃん!」
……泣かれても困るってのにさ
このまま飛び立つのも後味が悪くて、涙が落ち着くまでフェンスに寄りかかってやり過ごす
『…あのさ、あの子のこといくら嫌っても構わないけど、傷付けたりすんのは許さない』
「立派だね…その ひかりって子がアンタのこと好きじゃなくても…?」
『まぁね』
…とりあえずこれ以上変な気を起こさないように注意してさっさと退散するか
再び彼女に向き直ると、攻撃的な目つきで指をさされる
『うおっ』
「格好わるっほんとは全然そんなこと思ってないくせに…
自分じゃなきゃイヤだって素直に言えばいいじゃん」
言い返すのもメンドくさくて「そーですね」と適当に流す。そんなオレの態度にかちんと来たのか、その子はバッグからスマホを取り出し、一つの写真をオレの前に見せつける
写真は二人の人物が写り込んでいて
ひかりちゃんと焦凍くん
ピタリを体を寄せ合って、露わになってるひかりちゃんの額に焦凍くんがキスしてるものだった
「…これ見てもまだ同じこと言えんの…?
アンタみたいに大人ぶって相手の幸せのためなら身を引けって??別にカッコよくないから」