第6章 𝔽𝕠𝕦𝕣 𝕠'𝕔𝕝𝕠𝕔𝕜
上唇から下唇にかけてねっとり愛撫され、途中変な声が出そうになってしまうのを耐える。
轟くんとの口づけは乾いた心を満たしてく
いつの間にか閉じていた瞳を開けると視界は轟くんでいっぱいで、伏せた睫毛があまりにも綺麗で見惚れてしまった
チュッと音がなって彼の唇が名残惜しそうに離れていく
キスしたあとはなんとも言えない空気が私達を包む
「…爆豪の名前を出さないでくれ」
「 秋月 のことどうにかしちまいたくなる」
その言葉だけでやっぱり私はいくらでも待ってられるような気がした
クレープを完食し、他愛のない話をしたあと駅に乗って帰る
『明日の体育祭頑張ろうねっ』
別れ際に拳を突き上げて言うと轟くんは一拍置いてから言う
「あぁ、明日終わったら 秋月 に話したいことがある」
『話したいこと…?』
轟くんはどことなく緊張してるように見えて私まで身構える
「 秋月 には知ってほしいと思うから」
『…うん!わかった』
出来るだけ軽く返事して轟くんの背中を見送る
なんだろ…なんて口に出してみるけど、なんとなくわかるような気がする
今日のこと
三奈ちゃんが私を心配して言ってくれたんだってことは十分に理解してる
でもそれでも、私はいい
アパートに到着して鍵を開けて中に入る
暗くて音一つない部屋は自分の部屋だと思えなくて、見事に寂寥感を漂わせていた
一ヶ月も住んでいるけど一度も出たことがないベランダに踏み込む
建物がなくて、草木で溢れてる外観
夕方を知らせるカラスの鳴き声、子供のはしゃぐ声
ベランダの手すりにもたれながら目を瞑り黄昏る
『…あ、れ…』
手すりを握る手に水滴が落ちてくる
雨かと思って上を向くけど、そういえば今日は文句なしの晴天だった
雨は私だ
それが合図になり次々と涙が押し寄せ頬を伝う。
日に日に増していく違和感。自分と彼の気持ちがぴったり重ならないと感じることがある。
三奈ちゃんの言われたことが後押しになり
勝己くんに言われたことで懸念が顔を出した。
不安でこの気持ちごと押しつぶされてしまいそう
待ってるなんて言うべきじゃなかった。
『ぁ…うっ…』
だってこんなに苦しいよ