第2章 昔々のお話
「姫様!!お逃げください!!」
女中の菊が夜遅くに、私と雪花ちゃんが寝ている部屋に来たのだ
「どーしたの、菊?」
その時の私達は寝ぼけていたから状況が掴めなかった、でも菊は普段、落ち着いていて、冷静な人だった記憶がある
その人が慌てるなどとただ事ではないと今は思う
「とにかく外へお逃げになってください!!」
菊は鬼の形相で私達を部屋から引っ張り出して外へと続く廊下に出た
「菊!!」
前のほうから美桜家の古株である家臣の直樹さんが来た
いつもの服装とは違い、鎧を着ていた
まるで戦に出るような格好だった
「直樹さん!状況がわかりませぬ!!一体この騒ぎは」
「敵襲だ、美桜家に恨みを持つ者が押し寄せてきた、姫様方を避難させろ」
「お待ち下さい!当主様は!?」
「あの方は足止めをしている、俺もすぐに向かうつもりだ」
「そんな!!」
「いいから姫様方を安全な場所ヘ」
「くっ……」
「頼りになるのはお前しかいないのだ」
「分かりました、あなた様もご武運を」
直樹と別れた、菊と私達は中庭ヘ出た
そこから外に出るつもりだったのだが……