第38章 始まりの刻
夢を見ていた。
懐かしい夢を。
夢の中では俺と女がいた。
姿は影にかかったような感じがして見えない。
だがその女は人間ではないことだけが分かる。
そう−−女には頭の上に角があったのだ。
“ねぇ−−私はこの桜の花びらのように綺麗に死ねるのかしら?”
女は辺りに咲く満開の夜桜を見つめながら言った。
“それは分かりません、ですが俺は−−”
夢の中の俺は何かを言っていたようだが上手く聞き取れない。
すると女は次にこう言った。
“私が行うことはきっと多くの者が犠牲になる。あなた達はそれを知った上でここに−−私の傍にいる、心強いわ”
夢はそこで終わった。
「……」
俺は寝ていたベッドに起き上がる。
「待っていてください『団長』−−あなたは必ず俺が」
そして俺は再び決心した。
あの方を−−俺の大切な人をこの広い世界で探すことを。