第9章 光る星のように
[No side]
カーテンの隙間から差し込む朝日に八雲はうっすらと目を開け、体を起こした。
ベッドから降り、顔を洗い、寝癖を直す。濃い隈を隠して、いつものように学ランに袖を通した。
部屋を見渡し満足そうに笑うと、軋む身体を動かして部屋を出た。
八雲が最初に向かったのは食堂だった。真衣、三輪、西宮の3人が座って団欒している。
「おはよー。八雲。あんたも座ったら?」
食堂に入ってきた八雲に気がついた真衣がすぐに声を掛けたが、八雲は首を横に振った。
「すぐ行かないと行けないところあって…。みんな頑張ってね。」
八雲が悟られないように考えに考え抜いた言葉だった。
3人は不思議そうに八雲を見つめた。八雲は笑い返して食堂を後にした。
八雲は何も持たずに新幹線で東京に向かった。
東京に着くなり、高専に向かうと真っ先に真希の元へ急いだ。
「真希ちゃん!」
訓練の真っ最中だった真希は手を止めて八雲の元に歩いてくる。
「お前また抜け出してきたのかよ。今日はなんかしたのか?」
「ううん。真希ちゃんの顔面拝みたくなっただけ。じゃあね!邪魔しちゃった。」
真希は八雲の様子に首を傾げるも遠ざかっていく八雲の背中を見て、また訓練に戻った。
「五条先生…。」
「やぁ、八雲…。元気では無さそうだね。もしかして、八雲死ぬ?」
なんて勘が鋭い男なのか。八雲は苦笑いしながらこくりと頷いた。
「そうか。頑張ったね。」
五条に頭を撫でられ、八雲の目から大粒の涙がぽろぽろと溢れ出した。下唇を噛み、学ランの袖で拭くも一向に止まる気配がない涙。
嗚咽混じりに八雲は五条に気持ちを吐き出した。
「ぇっ…何も、頑張って…ない。もっと皆と…ぅぐッ…いたい…ぇう…。」
「大丈夫。ちょっと長いけどさ。待ってて、皆いつかは死ぬんだから。独りにはしないよ。」