第9章 光る星のように
京都に戻ってきてから1週間。
結局あの時、宿儺は来てくれなかった。やっぱり今までのあれはただの気まぐれだったんだろう。
日に日に悪化していく身体を誤魔化して皆との時間を増やした。
軋む身体はなかなか言うことを聞いてはくれないけど、きっと皆にはバレてない。
大丈夫…。あと少し。
___あと…少し…?
死ぬまで?
ふっと呆れて笑いが漏れた。
私は何を考えてるんだろう。分からない。生きたいの?死にたいの?
私はどうしたい?
ベッドとテレビ以外何も無い部屋。
もう何日も何も食べてない。
何を食べても気持ち悪くなって全部吐いてしまう。
どんどん体重は減っていく。目の下の隈も。いつもコンシーラーで隠してる。
「八雲痩せた?」
私の顔を覗き込む真衣ちゃん。ドキリとして、サッと目を逸らす。
「全然!寧ろ太っちゃったよ〜、美味しいもの多すぎてさ〜」
「ふーん。」
眉間に皺を寄せる真衣ちゃんにバレないようにそそくさと自分の部屋に戻った。
死期が近い。
ばあちゃんもこんな気持ちだったのかな…。
死ぬのは怖くないけど、もっと皆と居たかったな…。
自分は独りだとか言ってかんちゃんを縛って、皆と仲良くなったら後々辛くなるからなんて逃げておいて今更後悔するなんて。
やっぱり、失って初めて気がつくのが人間か…。
___去っていった時間。
___無駄なことに費やしたこの命。
何もかも戻ってこない。今になってそんな事に気が付くなんて私は愚かだとつくづく思う。
みんなみんな優しくて独りなんかじゃないのに、死んじゃったかんちゃんに縋りついて呪霊にして…
もう辞めよう。今になって後悔したって何も返ってこない。
「楽しかったなぁ…。」
何も無かった部屋に溢れる皆との思い出。
誰かにとってはただの服で、ただのぬいぐるみ。ただの物。でも私にとってはすごく大事な宝物だ。
きらきら輝いて見えてそれだけでさっきまで重かった気分があっという間に軽くなった。