第8章 命短し。
私はちゃんと高専に行くようにした。ついでに寮にも入った。理由は単純、1人であの大きな屋敷住むのは気が引けたからだ。そりゃあお手伝いさんもいるけど、自分以外の大人は皆お手伝いさんなんてちょっと居ずらい。
だから寮に入って、みんなと関わることを選んだ。
やっぱり同年代といる方が楽しい。結構有意義に時間を使ってると思う。ただ…その時間に入り浸っていたら薬だとか、月一の病院だとか現実に引き戻されるような事をしなくなっていった。
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「八雲、あの器の子とはどうなったの?」
「虎杖君のこと?」
教室で霞ちゃんと真衣ちゃんと3人、駄弁っていたところそんな爆弾を真衣ちゃんは投下した。
私としては、虎杖君というより宿儺本人との関係の方が深いわけで…。なんて答えればいいのか分からなかった。
「虎杖君とは何も無いよ。ていうか、前も言ったじゃん?そういうんじゃないよって」
そう言って誤魔化したが、疑いの目は向けられたままだった。
「いいや。あんたなんかあったでしょ?」
「な、何も無いって。」
「正直に言いなさいよ!!」
顔を両手で掴まれてむにむにと頬を弄られる。
「八雲はほんとにあの子の事なんとも思ってないの?」
「ん?」
それまでにこにこ笑って話を聞いていただけの霞ちゃんが急にそんな事を言った。
そんな事真正面から言われるとちゃんと考えざるを得ない。
虎杖君のことをもう一度ちゃんと思い出してみる。
私の中に浮かぶのはやっぱり優しいだとか明るいだとかそんな在り来りたりな事だけで、宿儺の印象の方が強かった。
彼の気まぐれがなければかんちゃんを祓う事もなかったと思うし、ここでこうして2人と会話出来ていなかっただろう。
呪いの王の気まぐれなんて迷惑以外の何物でもないだろうけど、私としては結果としていい方向に向かっているし、かんちゃんに関しては凄くいい事だと思う。
あのままだったら私はかんちゃんを祓う勇気も出なかった。つまりは恩人に値するのか。
「やっぱりそういうんじゃないな。恩人?」
「「えぇ。なにそれ」」
ちょっと引かれてちょっと傷ついた。