第4章 八雲のトリガー
吹っ飛んだ呪霊を追いかけ、追い討ちをかけるように鎌を振り上げた。が、しかし____
ピシリと柄に亀裂が入り、跡形もなく鎌が砕け散った。そのまま、八雲は打撃を繰り出した。
(今の体勢から…。打撃が重い…)
八雲は呪霊の術式であろう植物によって何本を木を何本もへし折りながら吹き飛ばされた。しかし、呪霊もまた八雲の打撃が当たった腕が抉れダメージを受けていた。
「まじかよ。八雲さん強すぎねぇ?」
「俺もあそこまでは初めて見た。相当、キレてるぞ。あんなに粉々になった呪具は初めて見た。」
誰も見た事がなかった八雲の本気。狂気に満ち満ちた目に東堂ですら冷や汗をかいた。
八雲は学ランに着いたホコリを払いながら立ち上がり、ぷッと血を吐き出した。
「許さない…。かんちゃんは…どこ!!」
地面が抉れる程の強く地を蹴り、更に上がったスピードで呪霊に近づくと頭を掴み地面に叩きつけた。
続け様に呪霊の腕を踏みつけた。血と思しき紫色の液体が周囲に散る。また、踏みつけた。また液体が散り、八雲の顔にも付着した。もう腕は体から離れ、びくびくと痙攣している。
潰れた頭が再生し終わった時、八雲は足を上げ何度も何度も踏みつけた。
無表情で、ただ目の前の敵を潰した。
呪霊の血が流れ、あっという間に周りは紫色に染まった。
いつも温和な八雲の姿に東堂も虎杖も驚愕し、息を飲んだ。どうすることも出来なかった。
明日は我が身といったところか。声掛けた次の瞬間には自分も八雲の下でぐちゃぐちゃになっている特急呪霊のようになってしまうという想像が容易にできた。
実際、今の八雲の心を埋めつくしていたのは、''神無の生死''だった。自分が神無の残穢を間違えるはずがないという確信があるから怒り狂い、呪霊を追い詰めた。
頭のない呪霊を見つめる八雲の瞳には何も写っていなかった。
(呪具壊しちゃった…。かんちゃんに…怒られちゃう…。ていうか、私何してるの?)
八雲が我に返ったとき、再生された呪霊によって足首を捕まれ軽々と投げ飛ばされた。