第10章 【ヒミツの合図】
「れぇん?どこいんの?
目が慣れてないからわかんない…」
「……畳。」
ドアからは死角に位置する場所を答える廉。
「畳なんだ笑 てか、なんで付けちゃダメなの?」
海人が机や椅子を頼りにそろそろと
こっちに近づいてくる気配がする。
「…なんででも。」
「あっ、廉いた笑 てか、めっちゃ
ちっちゃくなってるの、なんで??笑」
相変わらず三角座りをしたままの俺を見つけて
海人が笑う。
「こんな暗くして…観てくれなかったの?
廉に観てほしかったんだけどな」
「……観た。めっちゃかっこよかった」
「それならよかった…!ねぇ…惚れ直した?笑」
「…だるっ」
腕を枕に膝に伏したまんまやったから
海人が腕を解こうと俺の手首を掴む。
「触らんとって」
「ねぇ…、何か変だよ…廉。どした?」
「海人より変やない」
「それはそうかもだけど笑 オレのこと理解して
欲しいツッコミくれんの、廉だけだし」
「……ベッドで突っ込んでくんのは海人やけどな」
なんてジト目で訴えてくる廉に思わず笑って
「それはそうだけど!笑」なんて返したけど…
そのあとまただんまりを決め込んだ
廉の肩をさすりながら聞いてみる。
「ねぇ、、何か嫌なことあった?
わかんないよ、話してくんないと…」
「嫌なことはないよ。なーんもない。」
セリフは明るいクセに声色はそんなことなくて
不気味に聞こえる。
「もう…気になってることあったら言ってよ!」
若干、強引に三角座りの廉ごと抱きしめる。
―――海人に抱きしめられた瞬間、
ふわっと鼻腔をくすぐった香り。
どっちのかわからんかったけど、
明らかに海人からはしたことない匂いで…
「触んな!!」
胸元を押しのけられた拍子に、
後ろ手に受け身をとる海人と距離が空く。
「っ…ごめん、」
廉自身、驚いてたみたいで
すごくバツの悪そうな顔をしていて…
「もしかしてオレ、やなことしちゃった…?」
「違うっ海人は悪ない!
けど…お願いやからもう、聞かんで。
これ以上追い詰めんとってよ…
海人もわかるやろ?男なんやから、」
男には…誰にも侵されたくない領域があって。
男同士の情が深まりやすいのは、そこには絶対
踏み込まんよう細心の注意を払うからやと思う。
勿論、海人と俺もそう。
「…わかった、もう聞かないね」