第25章 【想い人、憑依型につき】
「このあとさ、海人ん家で飲み直していい?」
廉とご飯に行って、たくさん笑って心もお腹も
満たされた頃、まだ話し足りなかったのか
おしぼりを何回も畳み直していた廉から
言い出しにくそうに誘われた。
廉に誘われたら断る選択肢なんかオレにはなくて、
慣れた手つきで配車アプリにログインする。
タクシーを降りたあとエントランスを抜けて、
コンシェルジュさんへの「おつかれっすー」
っていう気の抜けた挨拶もオレの部屋へのルートも、
素足&地べた生活のオレの部屋にいつからか
持ち込たれたマイスリッパを取り出す様も
慣れたもんで。
オレに断ることもなく当たり前のように洗面所で手を
洗い、リビングに移動した廉はソファのいつもの場所に
座って、オレは廉の右足の横っちょの地べたに座った。
2人してハマってるアニメをBGMに流しながら
お酒も入って、ホロホロになってきた頃
オレの肩に乗っけた足を揺らしてマッサージごっこを
始めだした廉に、今日は随分とご機嫌なんだなぁと
思い切った提案をしてみる。
「ねぇー、廉をモデルにして描いていい?
絶対に美人に描くから!!」
俺が足を乗っけとる肩越しに振り返った海人が
また、突拍子もないことを言うてきた。
海人はいつもそう。
どんだけ一緒におっても飽きんくらいのオモロ男で
可愛くて、俺の次くらいにはカッコよくて。
「美人に俺を描くって…何?笑」
「んっとーあのさ?今度オレ出ることになった
じゃん?北斎の映画。役どころ的には描くフリ
だけでいいんだけどせっかくならフリじゃなくて。
ちゃんと描く所作?身に着けたいなって、思って…」
この願望もホントだけど、一番の理由は…
大義名分があったら廉のことを遠慮なく見れるかもって
そんな邪な動機だなんて、廉に言えるはずもないけど。
だけど、廉からいいよって返事がほしくて
祈るような気持ちで見つめる。
「それはわかるけど…美人画やろ?何で俺なん笑」
「んー…廉ってオレの周りでいっちゃん色っぽい
からさ。……ダメ?」
そんなん言いながら
小首をかしげて俺を見上げてくる海人。
コイツ、やりよるわ…苦笑
俺の隣におる髙橋海人は…
幼い頃から強い拒絶というものをされたことがない
めでたい奴なんやろうなぁ…っていう甘え方をする。