第23章 【不自由な僕たちは】
さっきご飯食べたから歯は磨いたけど、
顔洗ってないし、パジャマだし、
髪の毛ぐちゃぐちゃだし、全っっ然
好きな人に会える状態じゃないんですけど…!
て!い!う!か!
友だちの前で海ちゃんって呼ぶなって
何度も何度も言ってんのに、なんで呼ぶの?!
しかも、よりによって永瀬くんの前で!!!
マジはずいから!!
ありえない!ありえない!!
もう!!ママのバカ!!!!
こんなん、寝たふり一択っ!!
「……返事がないわねぇ…」
もう一度ノックが聞こえて
「入るわよー?」とドアが開く音がした。
「あら…ごめんなさい、寝てるみたい…
永瀬さん、どうされます?」
「えっと…迷惑やなかったらちょっとだけ、
待たせてもらっても大丈夫ですか?」
「うちはもちろん大歓迎よ!あ、
今からケーキ買いに行くから待ってて?
もしそれまでに起きなかったら
申し訳ないけど…ケーキ、食べて行ってね!」
「ほんまですか~!ありがとうございます!」
「好きなケーキとかある?」
「ガッツリお言葉に甘えちゃうと…
チーズケーキが好きです。なんか、すんません笑」
「よかったぁ~!そういうときは
遠慮しないで教えてくれた方が嬉しいから!
近くにチーズケーキが美味しいお店があるのよ。
ちょっと、待っててね?」
そう言い残してご機嫌で
階段を下りていく髙橋くんママ。
かわえぇ人やなぁ、と
髙橋くんが育ってきた環境が垣間見えた気がして
嬉しくなる。
ひとり、残されたもんやから
手持ち無沙汰になっちゃった俺は
髙橋くんのザ!男の子の部屋って感じの室内を
ぐるっと遠慮なく観察する。
結構漫画好きなんやなぁ、とか。
なんかちまちましたもんがたくさんあって
収集癖あるんかなぁ、とか。
ちゅーか…ほんまに、寝とんの?
こっちに背を向けて
窓の方を向いとる髙橋くんに
ジィーーッと疑いの目を向ける。
「髙橋くーん」
「海ちゃーーん」
その手にはのらないんだから…!
「……かいと、、」
えっ?!何、いまの…
今までも海人呼びのお願いされてはいたけど
今までのそれとは全然違くて。
あんな…あんな湿度のある呼び方
絶対ダメだし、
秒で疑われるっていうか…
他の人になんか、
絶対に聞かせたくないじゃん、。