第12章 【水曜日はキミ曜日〜before&after story〜】
バスの中から髙橋くんに手を振りながら
覚えてなかったんかぁ…と
自分だけのオナニーメモリーに
ちょっとだけ、切なくなる。
髙橋くんは覚えてなかったみたいやけど
俺たちの出会いは…入試の日。
「タカハシー!ごめん、消しゴム貸してくんね?」
「えっ…でも、僕も使うし…、。」
「じゃあ、半分にすりゃいいじゃん!半分!」
あぁ、入試の日なんてそれでなくても
そわそわすんのに、そういうことは
俺の視界に入らんとこでやってほしい…。
俺の斜め前に座っとる『タカハシ』と呼ばれる男は
断るでもなく、いいよと言うでもなく、
なんともハッキリしない態度で
もじもじしとるそいつに…少し、苛立った。
あほ!!
お前がそういう感じやから利用されるんやろ!
ま、、俺には関係ないけど。
今さら慌ててあんちょこ見るんもダサいし、
試験が始まる少しの時間を穏やかに過ごしたかった
俺は机に突っ伏して目を閉じた。
のに!!
定規で消しゴムギコギコしよるみたいで
なんや、斜め前がうっさい…。
「よっしゃ、切れた!じゃ、こっちもらうな!」
「あっ…」
「デカい方ぶんどるなんてお前悪いなぁー!w」
あーぁ、アイツらも相当ムカつくけど、
なんちゅーか……
そんな背中に『しょんぼり』って書くなや!!
おまけに…斜め前やから
どーしてもしょんぼりくんが視界に入ってくんの。
万が一のために消しゴムを2個常備しとった俺は
斜め前のしょんぼりくんの背中をツンツンしてみる。
したら、必要以上に
ビクーーッ!って反応するもんやから
それにつられて俺もビクっちゃって笑
そんなビビり散らすなんてどんだけ陰キャやねん笑
くらいに思っとった俺は、度肝を抜かれたわけ。
「え、なっなんですかっ?!」
って振り返ったしょんぼりくんは
俺が想像しとった感じと全っっ然違くて、、
めちゃくちゃ可愛い顔しとって…。
「んっ!これ……やる!」
顔も直視できんくらい柄にもなく照れちゃった俺は
ぶっきらぼうに消しゴムを押し付けた。
「えっ…いやいや、いいです!
僕なんかのためにそんな…」
僕…なんかぁ?!?
俺が言うのも何やけど、
そんだけ恵まれた容姿しといてなんやねん!
しょんぼりくんかと思ったら、卑屈くんかい!
いや…
一周回って嫌味くんか?!