第11章 【水曜日はキミ曜日】
「ガハハハ!それ、最高すぎん?笑」
永瀬くんの声だ…。
絵を描いたり、いつメンとだけ話す僕とは違って
いつも、色んな人と楽しそうな永瀬くんとは
出席番号も近くないし、あんまり喋ったことはない。
だけど、清潔感があって
男子にも女子にも公平に優しい永瀬くんのこと
嫌いな人はいないと思う。
いるとしたら天の邪鬼。てか、妬みだと思う。
背は同じくらいだから体育の授業だけ
物理的に近くなるけど、永瀬くんの友だちも
近くにいるから僕とは話すこともなくて…
そんな、遠い存在。
そんな永瀬くんと席替えで隣になった暑い夏の日。
当然、数多いる永瀬くんの友だちのうちの1人も
近くにいるから僕とは関わりのないまま
夏休みを迎えると思ってた。
思ってたのに…
「…おーい」
まさか自分を呼ばれてるとは思わないから
振り向かずに黒板を見ていると
「ねぇ、髙橋くんってば!無視せんとってよ苦笑」
「えっ…?ぼ、僕?」
「そ、キミ!このクラスにタカハシ君
自分しかおらんやん笑」
楽しそうに笑う永瀬くんを見てると、
もしかして自分、面白いこと言ったのかな?!
って嬉しい勘違いしちゃいそうになるんだけど、
残念なことに決してそんなことはなくて苦笑
だけど、彼と話してると気分が良くなるのは確かで
僕にとって永瀬くんは“また話したいな”って
思う魅力を持った人だった。
「僕に用事?…てか、知ってくれてたんだね。
僕の名前。」
「うん、何で?当たり前やん!笑 俺、始業式に
クラスメイトの名前は全員覚えるひとやから!」
「そうなんだ…すごっ。天才じゃん…」
「何で?笑 自分も名前覚えてもらっとったら
嬉しいから俺もそうしとるだけよ」
好かれる人には好かれる理由があるんだな
と思ったし、このクラスになって
3ヶ月が経とうとしてるのに未だに半分以上の
顔と名前が一致してない自分とはやっぱり
違う人種なんだなって思った。
それからちょいちょい、話しかけられて。
「髙橋くん、おはよっ!」
「髙橋くん、教科書忘れた!見して?」
「髙橋くん、先生来よるから起きや!」
「髙橋くん、ノート見して?」
「髙橋くんの字、見やすいなぁ!」
「髙橋くん、また明日な〜!」
好きでも嫌いでもなかった自分の苗字に
愛着がわいてきたのは多分
永瀬くんに沢山呼んでもらうようになったから。