【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第15章 一陽来復を願う(外伝・伏黒恵視点)
「…うッ!」
呪霊の斬撃を肩に喰らったさんは微かに呻き声を上げながらも、俺を抱きかかえたまま飛び退いた。
呪霊と距離が取れたところで、抱きかかえていた俺を降ろしてすぐ自分の背に庇いながら、ナイフを構えて呪霊を見据える。
「さん、怪我は…!」
「大丈夫。反転術式で治したから」
そう言われてみると、斬られたはずの肩は服が切り裂かれて赤く染まっているものの、傷口はすでに消えていた。
「恵くん、ごめん。一人で補助監督さんのところへ戻って」
安心したのも束の間、さんは俺にそう言い放った。
先程祓った呪霊の時とは全く違い、さんに焦りが見える。
「さっき話した予想よりも遥かに状況が悪い。あの呪霊は準一級どころか…特級相当かもしれない。補助監督さんに応援要請をお願いしてきてほしい。」
「さんはここに残るんですか?」
「あの呪霊は既に私達を標的にして、こちらの出方を窺ってる。そう簡単に出直させてはくれない。応援が来るまで、私が削れるだけ削っておくから」
呪霊を見据えていたさんは一度だけ俺の方を向いて、後押しするように「お願いね」と微笑んだ。
唖然とする俺の返事を待たずに、さんは呪霊に向かって駆け出した。
俺は後ろ髪を引かれながらも他になす術がなく、言われたとおりに元来た方向へ引き返した。