【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第15章 一陽来復を願う(外伝・伏黒恵視点)
「ァア゛…ゥア゛…ア゛…」
呻き声を上げて踠いている呪霊を見据えながら、さんはポケットから手のひらに収まるくらい小さな折り畳み式ナイフを取り出した。
「さん、それは…?」
「これ?サバイバルナイフだよ」
そう答えながらさんは折り畳まれている刃を出した。
それでも尚ナイフの小ささは否めず、頼りなさを感じて俺は不安を覚えた。
「そんな小さいナイフで戦うんですか?」
「物に呪力を込めるのはあんまり得意じゃなくて。私の場合、物を自分の体の一部のつもりで込めるとなんとか上手くいくんだけど、大きい得物だと感覚的に難しいから、このくらいが丁度いいの」
ナイフを構えたさんは「やってみるから見ててね」と言って、呪霊の方へ向かった。
呪霊は向かってくるさんに反応して勢いよく起き上がったが、呪霊が攻撃態勢に入るよりも早くさんは機敏に呪霊の懐に入り込み、ナイフを振り上げて斬りつけた。
「ギャァア゛ア゛ア゛ァ…ッ!!!」
呪霊が断末魔の叫び声を上げるその光景に俺は呆気に取られた。
刃渡りの短いナイフであるにも関わらず、さんが呪力を込めたその斬撃はまるで大刀を振るったかのように呪霊を切り裂いたのだ。
呪霊は再びその場で倒れ込み、やがて体が消失した。
「…準一級に相当するような驚異は感じられなかった。討伐対象の呪霊とは別の呪霊だね。先を行こうか」
大したことなかったかのような振舞いだが、今の呪霊もそれなりの呪力を持っていた。
それを術式も使わず、あんな小さなナイフでの一撃で祓ったさんの強さは本物だ。
あの五条さんが信頼するだけのことはある。