【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第12章 ある夏の日の情景(外伝・夏油傑視点)
屋台で食べたい物を一通り食べ終わり、再び参道を歩きながら、お互いの学生生活について語らい合った。
「同じ学年は男一人と女の子一人だったよ」
「じゃあ傑と合わせて学年で三人だけなんだ?呪術師になる人って本当に少ないんだね」
は非術師だが、呪霊やそれを祓う力を持つ人間の存在を知っている。
幼い頃から呪霊に取り憑かれやすい体質で、今までずっと私が呪霊を祓って守ってきたからだ。
本来、呪術のことは一般人に対して秘匿義務があるのだが、生まれた時からずっと一緒にいた私の良き理解者である姉には、私の話を聞いてもらいたかった。
「二人ともクセが強くてね。男のほうとは最近もやり合ったよ」
「え?喧嘩したの?」
「うん、なかなか意見が合わなくてね」
「傑と喧嘩できるその子にびっくりだよ。傑、いつも一方的に相手を圧倒しちゃうから…強いんだね、その子」
「そうだね、強いし…面白い奴だよ」
上空からドンッと大きな音が鳴った。
見上げてみれば、夜空に花火が打ち上げられていた。
祭りの終盤にこうして打ち上げ花火をやるのが毎年恒例となっている。
「花火、始まったね」
夏の夜空に次々と打ち上げられる花火を眺めながら、嬉しそうな声を上げるを横目に、私は少しばかり惜しい気持ちになってしまった。
この花火が終わったら、この愛おしい姉との夏祭りもおしまいだ。
明日にはまた高専に戻らなければならない。
年間で最も呪霊が発生する夏は、呪術師にとって忙しい時期だ。
任務をこなせば、それなりに報酬を貰えるのは良いことだが。
次に帰省した時には、を買い物へ連れて行って、美味しい物でもご馳走しよう。
そんなことを考えながら花火を眺めていると、周囲の人々の流れが急に動き出した。
隣にいたが人波にのまれて、私とはぐれそうになる。
「…!」
に手を伸ばして、浴衣の袖から覗く細い手首を掴んで引き寄せる。
こちらへ振り返ったは突然のことに驚いていたが、私を見て安心したのか、ほっとした顔で微笑んだ。
私もつられて口元を緩めながら、の手首を掴んでいた手の力を緩めて離した。
その瞬間だった。
強い突風が目の前を過ぎ去り、瞬く間に、忽然との姿が消えた。