【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第1章 ①
弟はよくできた優しい子だった。
幼い頃から得体の知れない悪いものに取り憑かれやすかった私を幾度となく助けてくれた。
その得体の知れない悪いものが呪霊というもので、力を持たない私のような人達が被害を受けてる現状を知った弟は自分の能力をものにする努力をして、呪術師と呼ばれる人達の中でも最上位の階級を得て評価されるほどに強くなって、世間一般的には知られないところで私達の平穏を守るために戦ってくれていた。
「傑?どうした、の…」
帰宅した私は、いつもは学校で寮生活をしていて長期休みにしか帰ってこないはずの弟がこの家にいることに驚いて声をかけたが、弟の足元にある存在に気づいて言葉を失った。
私達の両親が倒れて床に伏している。
突然のことに動揺して言葉が出ず、とにかく状況を測り知ろうと倒れている両親のそばに立っている弟の顔を見た。
弟は私が見たことのない凍てつくような無表情で私を見ていた。
そこから弟と何があったのか記憶がない。
いつのまにか迷い込んだ暗い闇の中と眩しい光の中を彷徨って、気づいた時には病室のような部屋でベッドの上に私は寝かされていた。
何が起きてるのかさっぱり分からない。
そのまま呆然と横たわっているとしばらくして部屋に大柄な男性が入ってきた。
どうやら私の様子を見に来たらしい。
私が目を覚ましていることに気づいた男性は私の体調を伺ってから、弟の担任教師だと名乗って、今いるここが弟が通っている学校であることを教えてくれた。
そして神妙な面持ちでこれまでのことを話してくれた。
弟は任務中に集落で百人以上の一般人を殺害し、その後に両親と姉である私にも手をかけた。
非術師を殺して、術師だけの世界を作る。
同級生に理由を問われた弟はそのように答えたという。
両親と共に倒れていた私は驚くことに無意識の中で反転術式という術を使い、自身を回復させて生きていた。
もともと僅かながら持っていたのであろう呪力が生死の境を彷徨ったことで増幅し、奇跡的に能力が目覚めたのだろうというのが学校側の見解で、一時的な措置として私を保護したのだという。
今後もし私が目覚めた力を活かして術師になるのなら、学校側がこのまま庇護下に置いて術師になるために支援するということだった。