第1章 純情恋物語編
殿「まさか、伏せったまま逝ってしまうとは思わなんだ。そちには申し訳ないが、智子の亡くなった後始末をして貰いたい」
潤之助「と、殿?……何を仰せで……」
殿「時に、新しくお抱えの薬屋を雇おうと思うてな」
潤之助「はっ??」
潤之助さんは益々困惑した顔になった
殿「智子の病の一件もあったしのう。備えあれば憂いなし、じゃ
…そうそう、翔吾、と言ったかの、薬種問屋の若旦那は」
潤之助「!!!」
殿は、懐から扇子を取り出してパチリと開くと
のんびりそれで扇ぎながら言った
殿「近々嫁を娶るとか。
その折りには夫婦そろって目通りに参れと、お主から伝えて置いてくれぬかの?」
潤之助「!!!……はっ!」
潤之助さんは勢い良く頭を下げた
お智「……父上……」
殿「智子、幸せにな」
お智「父上……!!」
ひしと抱き合う父娘
あたしはそっと目尻の涙を拭った
それを横目で見ながら、雅吉が、カラカラ笑った
雅吉「やっぱりお殿様は人間が出来てらっしゃるねぇ!
いやぁ、粋だねぇ!」
にの江「こ、こら雅吉っ!お殿様に向かって失礼だょっ!!」
雅吉「なに言ってやがんでぃ!若様に張り手食らわした癖しやがってよぅ!」
にの江「そ、それは勢いってヤツだょ!仕方ないじゃないさ!!」
雅吉「あははは!若!やっぱしコイツを側室になんぞ貰わなくて正解でしたぜ!」
にの江「何だってこの、馬鹿亭主がっ!」
雅吉「馬鹿馬鹿言うなぃ、にの江よぅ!まあ、間違っちゃねぇがな!」
殿「いや、愉快じゃの」
殿は、パチリと扇子を閉じると、愉快そうに笑った
殿「これにて、一件落着じゃ!」