第1章 純情恋物語編
潤之助「………では、拙者が敵の根城までご案内を…」
わたわたと戯れる二人を、じっと静観していた潤之助さんがそう言って一歩足を踏み出すと
雅吉は、泡を食って目を白黒させている翔吾さんの首根っこを掴んだまま、ニヤリと笑った
雅吉「いやぁ、それにゃあ及ばねぇよ」
ピタリと足を止めて雅吉を見る潤之助さん
その瞳が、雅吉を見据えるようにキラリと閃く
潤之助「……場所を、ご存知だと仰るのか」
雅吉「まぁな、あの手の連中の塒はょ、だいたい知ってらぁな」
潤之助「……左様でござるか」
雅吉「あぁ、任せておくんな」
雅吉は相変わらず翔吾さんの首根っこを掴んだままで、へらへら笑いながら言った
雅吉「お智ちゃんのコトは俺に任せて、旦那はうちの可愛い恋女房を宜しく頼むぜぇ!」
にの江「よ、宜しく頼むって、アンタ!ナニ言ってやがんだぃ!!////」
雅吉「あっはっはっはっ!!」
いきなりとんでも無いコトを言い出す雅吉にあたしが食ってかかると
雅吉は大声で笑いながら、やっと翔吾さんの首根っこを解放した
雅吉「うちの女房はご覧の通りのじゃじゃ馬でよぅ!
ちゃあんと見張ってねぇと、敵の根城まで乗り込んできちまうってぇもんだ!
頼んだぜ、潤之助の旦那!」
にの江「なっ…////」
潤之助「……しかと、承知した」
潤之助さんは真っ赤になって慌てるあたしを、そっと押し退けると
腰の物を帯から鞘ごと引き抜いて、雅吉に差し出した
潤之助「……持って行かれよ、雅吉殿……
………いや、剣豪、相葉雅之進殿とお呼び致した方が宜しいかな?」