第1章 純情恋物語編
旅は道連れ、世は情け
この世は大平、花より団子
そんな此処は、華のお江戸の八百八町
義理と人情が大好きな、粋で鯔背なスットコドッコイが集う町
ああ
申し遅れましたねぇ
あたしは、にの江
この江戸の町の片隅で、ケチな宿屋を営む女主人で御座います
ええ
一応亭主が居るんですがねぇ
コレが、札付きの遊び人のオタンコナスで
店の手伝いなんざ、したことがない
でもねぇ
憎めない馬鹿なんでござんすよ
人間、あれやこれやのイザコザやら、シガラミやらを嫌ってほど見てくるってぇと
馬鹿みたいに単純な男が、可愛く思えるもんで御座います
あたしが昔の想い人のトコに見舞いに行くのだって
嫌な顔一つしないで送り出すような、お人好しなんですよ
けど、何時もは糸の切れた凧みたいにフラフラ出歩いてる癖にね
忠犬宜しくあたしの帰りを待って居やがるんですよ
そりゃあ、可愛くもなりますよ
何はともあれ
平々凡々と暮らすのが一番幸せだってぇご時世に
何の因果か
あたしの周りには不幸を背負って歩いてるみたいな輩が多くてねぇ
見て見ぬ振りをしたいトコで御座いますが
此処は天下の大江戸で、あたしゃ生粋の江戸っ子
義理と人情が大好きな、スットコドッコイの1人でござんすよ…