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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第4章 禅寺人斬り騒動編


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お智「何故で、御座いますか?」



お智ちゃんが、ちょっと心外だと言った顔で雅吉に言うと

雅吉は、やっぱり何時も通りにへらへら笑いながら言った



雅吉「お智ちゃんと翔の字んとこには、恋太郎ってぇ立派な跡取り息子が居るだろう?

侑李は男の子だし、恋太郎よりちょいとばかり兄さんだ

いずれ、そんなつもりは無くても、跡目を廻って面倒くせぇ事にならねぇとも言い切れねぇだろ?」

お智「それは…」

翔吾「雅吉兄さんの言う通りですよ、お智ちゃん」



納得の行かない顔をしているお智ちゃんに、翔吾さんが優しく諭す様に言う



翔吾「世の中、にの江さんやら雅吉兄さんみたいに、人が良い方達ばかりじゃあないですからねぇ…悲しいことに

二人が大きくなって、いざ跡目をと言う話しになった時に、無駄に事をややこしくしようって輩が居ないとは言えませんよ」

お智「翔吾さんまで……じゃあ、どうすれば……」

雅吉「そりゃ、俺とにの江の子にするに決まってらぁな」

にの江「!!////」



雅吉はさも当たり前だと言わんばかりにそう言うと

驚いて自分を見ているあたしに、にっこりと微笑んでみせた



雅吉「侑李のお母が、にの江に瓜二つなのも

その瓜二つなお母が、生田のいる禅寺で事切れたのも

生田が、俺に侑李の行方を捜させようとしたのも

侑李が、お智ちゃんに連れられてうちに来たのも…


…全部、子供に恵まれない俺とお前の為に、神様がしてくれた粋な計らいだとは思わねぇか?にの江よ…」

にの江「……お前…さん…///」

雅吉「そんなよぅ、神様の粋な計らいを無碍にするなんざ、それコソ罰当たりだってもんさ

………なぁ?」

にの江「………………………ぅん////」



あたしは、堪えきれずに溢れ出した涙を


雅吉の、広くて暖かい胸に顔を押し付けて誤魔化した





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