第4章 禅寺人斬り騒動編
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旅は道連れ、世は情け
この世は大平、花より団子
そんな此処は、華のお江戸の八百八町
義理と人情が大好きな、粋で鯔背なスットコドッコイが集う町
皆様、お久しゅう
三度ご無沙汰しておりました
にの江で御座います
さて
お智ちゃんと翔吾さんの愛息子の恋太郎ちゃんが、危うく大名家の養子に取られそうになった騒動は
まだ皆様のご記憶にも新しいものと存じますが
記憶を無くして、何だか妙な話し方にはなっちまったものの、真人間に生まれ変わった若様も
未だに
「やっぱり“ぽんちゃん”と呼んで欲しいある!」
なんて言って、潤之助さんを困らせている以外は
本当に立派におなりになって…今では、下々の者にまで良くお気遣いなされる若様として
家臣は勿論、国元の百姓にまで慕われる主君におなりになりましてねぇ
昔仕えていたお家の者として、あたしも嬉しい限りで御座います
だけど
世の中良いことばかりじゃあ御座いませんで
実を言えば、近頃町に人斬りが出るなんて噂がひっきりなしに飛び交ってましてねぇ
野次馬が大好きな、飛脚の信吾さんなんて
「次ぁ必ずこの眼で人斬りの野郎を拝んでやるんでぃ!」
なんて、怪しい事を言い出す始末
そうなってくると、うちの馬鹿な物好き辺りが
「んじゃあ、そん時ゃあ、いの一番で俺んとこに知らせてくれよ!」
なんて、言い出して
信吾さんも、調子良く
「合点承知ですわ!真っ先に雅吉さんとこ知らせに来まっせぇ!!」
…なんて、下らない約束を交わしたりなんざしておりました
…そんな折り
その物騒な知らせは
例の、街一番の野次馬の飛脚からもたらされたので御座います…
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