第3章 養子騒動編
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─所変わって、大名家の下屋敷─
奥座敷に軟禁されているお智ちゃんが、せめて下屋敷にいらしている御正室の方に目通りをと願い出て
息子を案じるばかりに伏せってしまった継母を見舞っている所で御座います
お智「母上様、お加減は如何で御座いまするか?」
正室の方「…なんじゃ、智子。わらわを嗤いに参ったのか」
お智「…母上様…」
正室の方「わらわとて、若様が居なくなってしもうたのを、皆が何と言って嗤っておるのか知っておるのだぞ
…やれ、天罰だ、いい気味だと…」
お智「………言いたい者には、勝手に言わせておけば宜しいのです」
正室の方「……………」
お智「……我が子の身を案じる母の気持ちを嗤うなど、その様な事をするのは愚か者です
母が子を想う気持ちは、大名も商人も、正室も側室も関係御座いませんのに…」
正室の方「………智子」
お智「わたくしも、母になって初めて実感致しました
我が子の幸せ以外に大切なものなど、母親にはありはしないのだと…」
正室の方「…………」
お智「兄上は、きっとご無事で御座います
今に、松本が兄上を連れ帰ってくれる筈…
…ですから、どうか、お心を強くなさって下さいまし
わたくしも、兄上の無事を心より信じております故」
正室の方「……智子……ぅ、……うぅ……///」
お智「………大丈夫ですょ、母上
兄上はきっと戻られます
だって、こんなに母上が案じて…こんなに愛してらっしゃるんですもの」
正室の方「智子……ありがとう、智子や……」
お智「……母上……」
床の中で泣き崩れる正室の方
お智ちゃんは、散々自分をイジメ倒した(笑)継母を、優しく抱き締めてその背中を擦ってあげております
ああ……なんて優しい姫君でしょう!!
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