第119章 時子始動。
知らない女性に頬をビンタされた夜。
月明かりに照らされたベランダに出て
私は1人預かった母子手帳を読んでいます。
マンションの中階なのでそれなりに風も強いけれど、
とても気持ちが良いです。
「父、五条悟。
母、五条。
第一子、五条守......」
(確かに私の名前だし、
私の筆跡によく似てる...
でも...やっぱり思い出せないのよね。)
あの女性が嘘を吐いているようには感じなかったけれど、
でも本当に思い出せないのです。
私の頭の中にある記憶は亜緒さんとの
甘い新婚生活の日々…だけ。
"ペラッ"
表紙を見てもピンと来なかった私は、
表紙をめくり1ページ目を見ます。
「8月11日16時44分誕生
...2777kg標準...」
病院が記載した欄と、
自分で書いたであろう
出産時の感想などが書かれていました。
「...出産は辛かったけれど悟さんによく似た
守の姿を見たら全部忘れちゃった。
本当に可愛い♡産まれてきてくれてありがとう!...」
(この文の感じ。
どことなく馴染みがあるから
おかしいのよね...
もし私があの女性の言う通り五条悟さんの
妻だとして本当に子供が居るとしたら、
何故その記憶が無いのかしら...?)
"パラパラパラッ"
丁寧に書かれた母子手帳。
これを偽造するなんて無理...かもと
思い始めた頃…
"パスッ"
「?」
地面に、
2枚の写真が落ちました。
(いけない拾わないと。)
私は中腰になり、
写真を拾いあげると...
「これは…」