第99章 見られている
それから30分程でしょうか...
厨房の中で明日の支度をしている
蒼さんを見つめていたら
話せそうな気がしたので口を開きました。
「私...妊娠しているんです...」
小さな声で言ったので、
もしかしたら蒼さんの耳には届いていないかも
知れません。
蒼
「そうか」
(あっ、聞こえてるみたい。)
蒼さんは特に動揺せず
そう言ってきました。
仕込みの手も止めません。
蒼
「父親は?」
静かな店内に響く
蒼さんの落ち着いた声...
なんだか涙腺が緩みます。
「…最近…離婚しまして…」
正解に言えば、
私が一方的に離婚届を渡して出てきたので
その後の事はわかりませんが、
他の女性とキスをしていた事を考慮すれば
離婚成立ですよね。
通常腹貸しをしたら"報酬"が貰えますが、
私が知らない所で悟さんから実家に
高額な報酬が渡されていたので悟さんが
追加で私に渡す義務はないので、
財産分与も無しで私は無一文なのです。
蒼
「よくある人生のハプニングか。」
「(・Д・)!」
下手に慰めるでもなく、
元気付ける言葉でもなく
離婚が人生のハプニングと表現した蒼さん。
(ハプニング...確かに(*´∀`*)!)