第4章 *File.4*降谷 零*(R18)
「私達も帰ろっか」
「……」
「どうしたの?」
「消毒」
踵を返そうとするのを引き止めて、この腕の中に抱き締めた。
「お前はズルいオンナだって、責めないの?」
「責めるワケがないだろ」
「……」
お前の本心は、さっきこの耳でちゃんと聞いた。
ヒロはそのつもりで、何も告げずに此処へ呼んだ。
雪乃と、俺を。
「誰もが当たり前のことだが、色んなことを経験した過去があって、今の雪乃と俺がいる。ただ、それだけのことだ」
「のワリには、容赦無かったけど?」
「愛するが故だろ」
俺自身が一番驚いた。
誰かの所為であんなにも嫉妬に駆られたのも、溢れ出し暴れ回る自分の感情を止めらなかったのも、あれが初めてだったんだ。
「だったら、許してあげる」
「謝らないぞ」
仕事ではなく恋人同士として初めて二人で過ごした夜に、半ば無理矢理抱き潰してしまったことは。
「うん」
そんな想いもきっと、雪乃には届いている。
「愛してるよ、雪乃」
「私もよ、零」
「!」
重なる視線は柔らかなモノに変わり、そっと瞼が伏せられたのを合図に口付けを交わした。
アイシテル
心の中で、もう一度そっと呟いた。
俺の中で満ち溢れるこの想いが、少しでも雪乃の心へ届き伝わるようにと、願いを込めて…。