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酸化した世界で君と詠う

第5章 戻れない場所(黒の時代)


「お?いいものを持ってるじゃないか」

「これのことですか?」

「そうだ、写真を取ろうよ…記念にさ」

「いいね〜ナイスアイディア」

「何の記念だ?」

「4人がここに集まった記念」

「いつものことだろう?」

「そうそう」

「いいじゃないか、ね?安吾」

「幹部殿の仰せのままに」

安吾がセルフタイマーをセットする
4人が並ぶ

「太宰、何故急に写真なんだ?」

「今取っておかないと、我々がこうやって集まったという事実を残すものが何もなくなるような気がしたんだよ、何となくね」

「太宰さんって偶におかしなことを言うよね」

「ほら、そろそろですよ」

4人がカメラの方を向く
フラッシュが焚かれる
静止している4人

「……」



太宰治__人間失格
月詠琴華__四季ノ神
織田作之助__天衣無縫
坂口安吾__堕落論


その通りになった
その日が、私達の間にある目に見えない何か、失った後の空白によって存在を知ることができる何かを、写真に残すことができる最後の機会だった
私達がその酒場で写真を撮る機会は二度と来なかった
4人のうち1人が、その後まもなく死んだからだ


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