第34章 再来
太宰は路地裏から出ると競馬場に向う
競馬場に着き、手すりに腕を乗せながら馬を見ていると白髪の男に話しかけられる
「一着は何番の馬でした?」
「九番だよ」
「どうも」
男性は太宰の隣に並ぶ
「貴方、当てましたね?」
「おや、判るかい?」
「発汗、体温、筋肉の音、光を失って却って見えるモノが増えましたよ」
“うわっ、何この人変態?”
琴華は男性の言葉を聞いて引いたようだった
「貴方の明日の運命も当てられます」
「本当に?」
「えぇ、“貴方に明日は来ません”」
男は太宰の手首に手錠をする
“な!!こいつまさか猟犬!?”
「元マフィア幹部、太宰治……共謀殺人138件、恐喝312件、詐欺その他625件の犯罪容疑で逮捕する」
「やられたね、追跡には気付いていたが……あの“猟犬”部隊が相手では人混みに逃げ込んでも無駄か」
「群集に逃げ込めば群集ごと消すだけです……ところで先程までに居た月詠琴華の姿を見かけませんね、どこに行ったのです?」
「知らないね」
“太宰さん、さっき言ってたのはこれのことだったんだね”
「まぁ貴方が居場所を知っていなくても探せば良いだけのことです」
「……」
「ふふ……聞こえます、貴方の憤り……孰れそれが罰への恐怖へと落ちる……その瞬間が待ち遠しい」
「君とは気が合いそうだね……1つ教えてくれ、何故今頃私を逮捕しに来た?」
「奇妙なことに急に証拠が復活したのです……指紋、録音、写真……まるで消されていた照明のスイッチが再び灯ったように」