第16章 宮治 体育館倉庫 閉じ込め
治side
ちょっと取りにくいけど
なんとか体勢を変えて手を伸ばすともうちょっとでぬいぐるみに手が届きそうやった
『大丈夫かな‥怪我しないでね』
俺がさっきの花澄みたいに前に落ちんように後ろから抱きついて押さえてくれとんやけど
柔らかいおっきい胸が密着して俺にはさらに逆効果やった
押さえんでも足は地面についとるし
全然大丈夫やけど可愛いから何も言わんとそのままぬいぐるみをとる
「はいどうぞ」
『わぁっ!やっぱり治は背も高いし手も長いからすごいね!ありがとう〜っ!』
ぱぁっと顔を綻ばせて
宝もん見つけた子供みたいに笑うもんやから
可愛すぎて胸にギュッと抱きしめる
「やばい‥今すぐ抱きたいわ‥」
小さな身体がぴくっと反応して
ほんのり頬をピンクに染めて見上げてくる
『い‥家に帰ってから‥』
「じゃあはよ帰ろか。俺もう我慢できんわ」
『んっ‥ぅん‥』
恥ずかしそうに真っ赤になる花澄の手を引っ張って体育倉庫の扉を開けようとするけどびくともせえへん
「ん?おかしいな‥」
いくら重たい扉や言うたって
俺が開けようとして開かんわけもない
扉を引く度にガチャガチャと聞こえてくる南京錠の音
「あかん‥誰か鍵かけてしもてるわ‥」
『えっ?!鍵‥っ?!と‥閉じこめられたっ?!』
びっくりして大きな声をだす花澄の息が白い
それもそのはず
今日は2月で関西もえらい冷え込むからあったかくしてくださいねって朝の天気予報で言うとったくらいやから
「おーい!!誰かおらんか?!」
『開けてくださいー!』
扉をガチャガチャしながら2人で大声を出してみるけど
鍵をかけたやつも
周りにも誰ももうおらんみたいで何も反応がない
「とりあえず‥まぁ誰かしら俺らが帰ってこん事に気付いて探しにくるやろ」
今日に限って携帯は家に忘れてきたし
花澄の携帯は充電がきれたらしい
『私はお兄ちゃん仕事だから‥侑が気付いてくれるの待つしか』
「せやな‥とりあえずおいで」
寒そうにふるりと震える身体を抱き寄せる
『私のせいで‥ごめんなさい‥』